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東京地方裁判所 平成4年(ヲ)2527号 決定 1992年10月05日

申立人 甲野ファイナンス株式会社

代表者代表取締役 乙山太郎

申立人代理人弁護士 前田知克

弁護士 幣原廣

弁護士 小川原優之

弁護士 星正秀

弁護士 鈴木達夫

相手方 株式会社 丙川

代表者代表取締役 丁原春夫

主文

一  相手方は、買受人が代金を納付するまでの間、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)に対する占有を他に移転し、または、占有名義を変更してはならない。

二  執行官は、買受人が代金を納付するまでの間、相手方が本件建物の占有の移転または占有名義の変更を禁止されていることを公示しなければならない。

理由

一  本件は、売却のための保全処分としての主文記載の命令を求める事件である。

二  記録によれば、次の事実が疎明される。

(一)  申立人は、平成三年三月八日、相手方所有の別紙物件目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)につき、当庁に抵当権実行としての競売を申立て、同日競売開始決定がなされ、同月一三日差押登記がなされた。

(二)  相手方は、申立人が抵当権実行通知を発信した平成三年二月五日(到達日同月六日)の後の同月一八日に至り、本件不動産につき同月五日売買を原因として所有権移転登記をしたものであるが、同月一八日受付で、やはり同月五日設定を原因として、相手方と同系列の会社である申立外戊田株式会社(以下「戊田」という。)が賃借権設定登記をしている。当時の相手方の代表者は、戊田の会長宅を住所としていた。

(三)  平成三年三月ころ、本件現況調査ないし評価のための現場臨場がなされたが、当時、戊田は、本件建物において、「ABC」名の看板を掲げ、室内に事務机・応接セットを置き、人もいたが、未だ正規の営業形態をなしているとは思えない状況であった。戊田は、執行官及び評価人に対し、賃料三年分(約二九〇〇万円)を全額前払いしていると主張した。評価書によれば、相手方及び戊田は、競売事件で度々名前の出てくる会社のもようである、とのことである。

(四)  平成三年九月一二日、当裁判所は、期間入札による競売実施命令(入札期間平成三年一一月一三日から同月二〇日まで)を発した。平成三年一一月初旬ころ、戊田が、本件建物の占有を解いて空室の状況になった。そこで、申立人が入札し、競売許可決定を得た。ところが、申立人が入札した翌日の同月一九日、○○党同士会理事と称する甲田松夫なる者が申立人会社を訪れ、本件建物の占有状況については問題があるが、自分達が解決の労を取る旨申し入れてきた。申立人が調査したところ、本件建物の前面ガラスに「政治結社 乙田社丙田義塾 丁田支部」なるシールが貼られ、上記乙田社が占有している状況であった。また、平成四年二月七日には、政治結社乙田社塾頭と称する甲原竹夫なる者が申立人会社を訪れ、「後のことは、条件次第で話し合いで解決するから、落札して貰いたい。」と申し入れてきたが、申立人は落札後はいかなる条件を提示されるか、いかなる手段を用いてこられるか不安であったので、代金の納付を見合わせた。その後、平成四年二月から三月にかけて、上記甲田と甲原は、数回申立人会社を訪れ、「三億五〇〇〇万円での債権の買取り」の話を持ち込んだりした(なお、本件競売の申立の被担保債権は元金が九億円である。また、最低売却価額は、当初約四億六〇〇〇万円、その後約三億七〇〇〇万円に変更された。)。平成四年三月一二日、当裁判所は、期間入札の方法による売却実施命令を発したが、適法な入札がなかった。平成四年八月には、本件建物を占有するものはなく、空室の状況となった。当裁判所は、平成四年九月二五日、期間入札による売却実施命令(入札期間平成四年一一月二五日から同年一二月二日まで)を発した。

三  以上の事実によれば、上記甲田ないし甲原その他の執行妨害を目的とする者が、本件建物を占有するおそれが高い。これらの執行妨害を目的とする者が、本件建物を占有した場合、本件建物の価格は著しく減少することになる。よって、申立人の本件申立は理由があるから、これを認容することとし、申立人に金五〇万円の担保を立てさせたうえ、主文のとおり決定する。

(裁判官 松丸伸一郎)

<以下省略>

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